加湿器

冬になると我が家ではヒーターをよく使うため、複数の加湿器が欠かせません。しかし、そのうちの一台が古くなって不調をきたしてきたため、新しいものを購入することにしました。

ところが、ホームセンターに行ってみても、加湿器が一台も置かれていません。別の店に行っても同じ状況でした。つい最近まで、さまざまなサイズや種類の加湿器がずらりと並んでいたのに、まるで夢のようにどこにもないのです。「ただの加湿器だから、買えば済む」と思っていた私の考えが甘かったのかもしれません。

そこで、以前たくさん加湿器を販売していた店に電話をかけてみると、担当者は「もう在庫はありません。今年はもう入荷しない予定です」とあっさり答えました。これには驚きました。まだ2月の後半で、寒さも厳しく、ヒーターを頻繁に使っている時期なのに、加湿器の販売はすでに終了してしまったのです。

しかも、どの店も同じような対応をしていることが分かるにつれ、その足並みの揃い方に不気味さすら感じてしまいました。加湿器が生鮮食品でもあるまいし、数台は在庫があってもよさそうなのに、と思います。昔は春先まで普通に加湿器が売られており、シーズンの終わり頃に少し値引きされていた記憶もあります。今では、加湿器は一斉に売り場から姿を消し、買うべき時期に購入しないと手に入れることが難しい状況です。

このような状況からも、世の中が年々余裕のない厳しい環境になりつつあるのを感じざるを得ません。追加の入荷予定は「ない」と言われ、メーカーからの供給がないから仕方ないと言うのですが、本当でしょうか。基本的にメーカーは商品を売りたいものですから、店側が望めばすぐにでも加湿器を納入してくるはずです。しかし、季節ものの商品は後半になると売れ行きが鈍るため、店側が在庫を抱えるリスクを避けているのでしょう。無駄を出さず、効率を重視するという考え方が背景にあるのかもしれません。

それにしても、このスピード感には驚かされます。最近では何事もこのような状況ですから、購入を先延ばしにしていると買いそびれてしまいます。加湿器のような家電製品を買うにも、焦らなければならない時代になってしまったことに、少し息苦しさを感じます。

これが正月飾りやバレンタイン商品なら納得できますが、そういえば、クリスマスケーキの売れ残りも昔に比べて激減しました。どんな業界も無駄を嫌い、極限まで効率を追求しているのは明らかです。

唯一店に残っているのは、高機能で高額なハイブリッドタイプの加湿器ばかりですが、私が欲しいのは、もっとシンプルで5,000円以下のものです。それに高額なものを無理して買う気にはなれません。仕方なく、インターネットで探すべきかと考えているうちに、気がつけばもう3月になりそうです。このまま少し我慢すれば、加湿器はもう必要なくなるかもしれません。

便利になったようでいて、実は常に気を張っていなければならない、落ち着けない時代に生きていると感じます。

日常